目次 |
・LeadershipとManagement ・アデアのリーダーシップ理論 ∟ アデア氏の功績 ∟ リーダーシップの原理 ∟ リーダーシップを発揮する3つの目的と8つの具体的行動 ∟ リーダシップは誰が発揮するのか ∟ 参考資料 |
LeadershipとManagement
リーダーシップとマネジメントの違い
Leadership | Management |
変化・挑戦 | 保全 |
直感・主観 | 分析・客観 |
正しい事を行う | 事を正しく行う |
リスクを取る | ルールを守る |
革新 | 管理 |
外への視点 | 内への視点 |
長期的展望 | 短期的視点 |
与えられた資源を膨らませる | 資源を効率的に活用する |
未来志向 | 現在志向 |
簡潔・コミットメント | 知識 |
「何をやるか」を考える (効果を重視) | 「どうやるか」を考える (効率を重視) |
マネジメントの語源は、ラテン語の「manus」であり、「手」という意味である。目的の方向へ動きを制御するというのが本来の意味である。
本来マネジメントは物、力学、システムに根差している言葉である。
他方、リーダーシップの語源は古英語の「lædan」であり、「導く、生み出す」という意味である。
Ledershipという英語が認知されている中で初めて使われたのは、leaderに位置を示す接尾辞shipが組み合わされた、1822年に遡る。※1)
※1) John Adair(2018)『Lessons in Leadership』Bloomsbury Business
リーダーシップは、従来から人に根差した言葉であり、本質的には「人」に対する「働きかけ」を意味するものである。
融合が進むリーダーシップとマネジメント
人々はしばしばリーダーシップとマネジメントの相違性や類似性について言及する。リーダーシップとは何か?マネジメントとは何か?といった学術的な問いである。
しかし、大多数の実践的なビジネスパーソンの関心事は「何をしなければならないのか?」という具体的な行動であり、これはリーダーシップなのか?もしくはマネジメントなのか?あるいは両方なのか?といった定義づけやラベリングには知識を整理する学術的意味はあっても、それらができるようになるためにはあまり価値がないものである。理解することと実践することには大きな隔たりがある。
加えて車輪の両輪のように、リーダーシップとマネジメントどちらが欠けてもそれぞれが目指す共通のゴールにはたどり着かないものである。
リーダーシップとマネジメントは、時代の変化とともに重なり合う部分が多くなってきており、優れたマネージャーはリーダーとして定義される。
逆もまた真なりで、優れたリーダーは、マネージャーにもなれる。
リーダーであれ、マネージャーであれ、すぐれた成果を創出することができるのが、すぐれたビジネスパーソンである。
これから解説するリーダーシップ理論は、リーダーシップとマネジメントの目指すべき共通の方向性を統合させたものである。
すなわちリーダーシップの原理原則、リーダーシップはどのような構成要素で成り立ち、それぞれの原則、リーダーに必要な資質、権威が意味するもの、不可欠な行動について解説を行う。
アデア氏のリーダーシップ理論
弊社はAdair International社によって、日本で唯一のAction Centred Leadership公認トレーナーとして認定されております。ここではリーダーシップの世界的権威であり、世界で初めてリーダーシップ学という分野で英国サリー大学にて教鞭を取ったジョン・アデアのAction Centred Leadership理論(以下、ACL)を中心にご紹介します。
- リーダーシップとは、生まれながらに持つ資質だけではなく、
誰もが訓練することで備えることができる機能であり、
経験や実践を通して身に付けることができるスキルである。 - リーダーシップとは、実践的な技術であり、誰もが学び、
自分のリーダーシップを磨くことができる。 - リーダーシップとは、メンバーに何かを与えたり、抽入するものではなく、
メンバーに内在する力を引き出すことである。
ジョン・アデア最大の功績 ~リーダーシップの常識を覆した集団の研究~
ACLモデルを確立したジョン・アデア最大の功績と言われているものは、古代ギリシア時代から通説であった「リーダーシップは生まれながらの資質であり、先天的なもの」という“リーダー偉人説”に対し、「リーダーシップは後天的なものであり、実践と経験により身に着けることができるもの」として、これまでの常識を覆したことである。
その根拠となった研究内容は、すぐれた成果を導き出すグループを研究したもので、リーダーの行為行動に着眼したものである。
すなわち古代ギリシアから「リーダーシップとは何か?」への問いは、「優れたリーダーとは何か?」という問いであったことに対し、アデアの問いは「何をすることがすぐれたリーダーたらしめるのか?」を解いたものである。
その解こそが、リーダーシップ行動論「Action centred Leadership」となる。
一般的にVisionやゴールを指し示すことがリーダーシップであると言われるが、はたしてゴールを指し示すことだけがリーダーシップ単一の機能なのであろうか。他者を支援し、働きかけることで成果に導くことはリーダーシップと言えないのであろうか。
実際に英国王立陸軍士官学校サンドハーストでは「Serve to Lead」が、リーダーシップの伝統とされている。
「Serve to Lead:リードへの奉仕」は、パラドックスである。だがそれは、すべての士官候補生が理解しなければならないパラドックスであり、士官候補生がパラドックスの意味を理解していない場合、彼らは陸軍での将来のキャリアを目指していないと結論付けられる。
リーダーシップの原理
ジョン・アデアによると、リーダーシップは曖昧なものではなく、シンプルに3つの構成要素から成り立つものである。
資質 (資質の研究) | 優れたリーダーが持つ資質によるリーダーシップ |
状況、知識や権威 (状況の研究) | リーダーの持つ知識や権威によるリーダーシップ |
機能 (集団の研究) | 集団に働きかける機能によるリーダーシップ =集団が持つ必要性に対して機能を果たす ※ファンクション…ラテン語:実行する → 広義では 「プロフェッショナルな立場にふさわしい特別な活動」 |
リーダーシップの構成要素
構成要素1:資質
リーダーシップにおいて、発揮する個人のパーソナリティやキャラクターといったものを切り離すことはできない。
すぐれたリーダーが持つべき一定の資質というものが存在する。
リーダーシップの資質を一言で表すのであれば、グループにおいて模範的であり、メンバーから期待され、または要求される資質を示すことである。
これはリーダーシップを発揮するうえで必須の要件となる。
この点は、リーダーとマネージャーの決定的な違いである。
マネージャーは要求された資質を持っているかどうかは別として、階層的組織において上層部から「マネージャー」として任命されることで、なることができる。
しかしリーダーは、メンバーが心から受け入れることができなければ、「リーダー」として認められることはできない。
さて、リーダーが持つべき一定の資質、すなわち「リーダーとして期待され、要求される資質」について考えてみる。
「あなたの職場で、リーダーとしてメンバーから期待されていると感じる資質、人間性」はどのようなものがあげられるだろうか?
すぐれたリーダーが持つ普遍的な7つの資質
「リーダーとして期待されていると感じる資質」の中でも、普遍的なものとして、7つの資質を挙げることができる。
Enthusiasm (熱意) | 熱意なきリーダーに、人はついて来ない すべきことを一所懸命に行うのがすぐれたリーダーである |
Integrity (誠実さ) | 信頼を生む資質である。 善や真実といった価値観を固守するという意味も含まれる |
Toughness (タフネス) | リーダーはしばしば人々への要求者である。その水準が高いがゆえに周囲は不満を持つ。 すぐれたリーダーは立ち直りが早く、粘り強い。 |
Fairness (公明正大) | 効果的なリーダーは、個々人の同等性、平等性を見て対応するのではなく、相違性、個性を見て対処する。 すぐれたリーダーは、お気に入りをつくらず、成果に対しては公平に報酬と罰を与える。 |
Warmth (温かさ) | 冷血漢はすぐれたリーダーにはなれない。 リーダーシップは感情をも包含するものである。 リーダーとして気を配り、思いやる心を実践することは不可欠である。 |
Humility (謙虚さ) | 謙虚の反対は傲慢である。 すぐれたリーダーへの道は、進んで傾聴し、うぬぼれたエゴを排除することである。 |
Confidence (信頼) | 人々は、あなたが信頼しているか否かを直感的に感じ取っている。 まずはあなたがメンバーを信頼することが大切である。 さらに自分自身を信頼する、すなわち自信を持つということはリーダーとなるために常に必要で、準備をすべきものであるが、自信過剰になってはいけない。 自信過剰は傲慢への一里塚でもある。 |
これらの資質は必要な要件にもかかわらず、一朝一夕で身に付くものではない。
リーダーとして実践と経験を繰り返し、磨き続けていかなければならないものであり、リーダーとして自問自答し、常にそうあろうと目指していかねばならない指針である。
構成要素2:状況
権威によるリーダーシップ
リーダーシップを構成する要素の2つ目は、権威によるリーダーシップである。これは普遍的な7つの資質を軽視する傾向にある。
というのは、このリーダーシップは状況によって左右されるという考えに重きを置いているからである。
すなわち権威によるリーダーシップは、ある状況で最も専門的知識を持っているものがリーダーであるという考えだ。
例えば、弊社では登山を活用したリーダーシップ研修を行っている。
リーダーを決める際もグループ内で主体的に決定するのだが、登山のアクティビティにおけるリーダーを決める際、頻出するチーム全体への投げかけがある。
「この中で登山の経験者はいますか?」というものだ。
人間性や年齢といったその他の前提条件を考慮しないのであれば、経験者がリーダーをやったほうがいいというのは、一般的に推奨される考え方のようである。
なぜならば、経験者=状況によって選ばれたリーダーは、幾多の経験や専門的知識技術によって、何をすべきか知っているからだ。
このアプローチは、仕事上での知識の重要性を強調している。
そして知識は権威へと結びつく。
4つの権威分類
地位と階級から生まれる権威 | 上司と部下など役割の関係 おれがボスだからこれをやれ! |
知識から生まれる権威 | 権威はそれを知っている人から湧き出る 知識は他の者への信頼を生み出す 技術的、または専門的な知識の獲得は、リーダーとして成長するための現実的な要素である |
個性から生まれる権威 | この極端な例はカリスマである |
道徳的権威 | 他者に犠牲を払うよう求める権威 ネルソン・マンデラなどが挙げられる |
権威によるリーダーシップにおける状況対応力の必要性
このリーダーシップは、リーダーがよく知っている領分では申し分のない働きをするだろう。
しかしリーダーシップと変化は切っても切れない関係にある。
状況は刻一刻と変化しているのだ。
これらのリーダーシップを発揮するのであれば、リーダーが予見できないものを含めた千差万別な状況で、責任を持ち続ける柔軟性を獲得する必要があるのだ。
構成要素3:機能
リーダーシップ3つの目的と必要性
ワーキンググループには、リーダーシップに関係する3つの変数が存在する。
1.リーダー自身
2.取り巻く状況
3.集団
1.リーダー自身と2.取り巻く状況については、先に述べた通り、リーダー自身の資質を磨き、権威付けを行うことで効果的なリーダーシップを促すことが可能である。
では3.集団についてはいかがだろうか。
この理論の最大のポイントは、優れた成果を出すグループのリーダーまたはメンバーにおける特定の行動様式に着眼したものである。
優れた成果を出す集団は、何に対してどのような働きかけを行っているのであろうか。
集団には、個人と同じように「個性」があり、「ニーズ」を形成する。
リーダーが、普遍的に満たさなければならない3つの不可欠な必要性(ニーズ)が存在するとアデアは説く。
【集団に対する3つの普遍的な必要性】
・タスクを成し遂げ、共通の目標を達成する必要性
・チームとして団結する必要性
・個人が人間として集団に持ち込む欲求に応える必要性
優れた成果を出しているチームのリーダーは、3つの必要性を満たしている。
すなわちリーダーシップの目的は、以下3点に集約される。
リーダーシップを発揮する3つの目的と8つの具体的行動
- 仕事を成就させること(目標達成)
- チームの団結を保持すること(チームビルディング)
- 個々人の欲求を満たし、育成すること(人材育成)
この3つのニーズを最大化するときに、最も良い成果が生まれることとなる。
この3つはスリーサークルと呼ばれ、Action Centred Leadershipのトレードマークとなっている。
仕事を成就し、チームの団結を保持し、個々人を育成することがリーダーシップの目的であり本質的な機能であると言い換えることができる。
3つの目的を最大化させるためには、具体的に何をするべきであろうか。
多くのグループに対しての研究結果によって、高い成果を出すリーダーの行動、チームに対しての働きかけ=ファンクションは特定されており、具体的なファンクションは8つ存在する。
これらは8 Core Functionsと呼ばれている。
- Defining the Task “タスクを明確にする”
- Plannig “計画する”
- Briefing “要約する”
- Controlling “統制する”
- Supporting “支援する”
- Evaluating “評価する”
- Motivating “動機付けする”
- Set an Example “模範となる”
リーダーは、「Task」「Team」「Individual」それぞれの必要性に、この8つの機能を使って働きかけ、段階や状況を見極めながらチームの「Task」「Team」「Individual」の必要性が常に最大化するように働きかけていかなければならない。
最も大切なことは、集団を俯瞰的に見渡したときに、チームに不足している対象に働きかけることである。
これこそがリーダーシップファンクションの本質である。
8 Core Functionsのさらに具体的な詳細内容は以下の通りである。
チェックリスト形式で紹介する。
チェックリスト:リーダーシップにおける具体的行動
1. Defining the Task “タスクを明確にする” | □ 何をするのかを明確にし、具体的な目的目標を設定する □ 共通の目的やVisionを打ち立てる □ 関係する情報を収集する □ 資源と条件を明確にする □ なぜそれをやるのかを明確にし、理由をチームに説明する □ チームを組織化する □ 各人がチーム目標を理解しているか確認する □ メンバーを巻き込み、同意を得る |
2. Plannig “計画する” | □ 「どのように」という問いに答え、実現可能なプランを作る □ 優先順位を明確にする □ 何をもって成功とするのかを決める □ 何を、いつ、どこで、誰が、どのように、という問いに答える □ チームと相談し、チームで計画を練る □ アイデアと提案を奨励し、チーム内にもその環境を作る □ メンバーの意見に耳を傾け、少数意見や貴重なアイデアを殺さない □ チームの基準となるValuesを定める □ 個々人の技能と能力を認める □ ターゲットを設定し、メンバーに任せる |
3. Briefing the Team “要約する” | □ チームに対して目的や計画の要点を説明する □ リーダー自身の中で、タスクの全体像と詳細を明確にする □ スタートだけではなく、任務に没頭して周りが見えないときにこそ、所期の目標に立ち返る □ 緊急ではなく、重要項目に焦点を合わせる □ 自分のことだけでなく、他メンバーがなすべきことについても全員に把握させる □ 全員が理解しているか質問する □ メンバーから質問することを推奨する |
4. Controlling what happens “統制する” | □ チームの全エネルギーを確かなものにする □ メンバーの自己管理、自律を促す □ 観察し、熟考し、自らコトを起こす □ ベクトルを合わせる □ 進捗スピードに影響を与える □ 調整と直接的働きかけを行う □ チーム基準やValuesを保持する □ 誘導し、元気づける □ 期限を強調する |
5. Supporting “支援する” | □ 物事が円滑に進むように支援する □ Serve to Lead □ 進捗状況を簡潔に伝える □ 皆が十分な情報を持った状態を保つ □ 計画を適応させる □ チームを勇気づける □ 摩擦を和解させる □ 支援し、元気づける □ 感謝する □ 個々人が抱える問題を解決する |
6. Evaluating results “評価する” | □ 成長、発展に向けた振り返りを行う □ チームの価値観に基づいた行動を考える □ 結果や達成度合いを検証、評価する □ 振り返りを踏まえ、次の行動を熟考する □ 進捗途中にも振り返る場を持つ □ 成功と失敗からチームで学ぶ □ チームの価値観に伴った行動を具体的に考える □ 個々人の育成方針やキャリア展望を明確にする □ 個々人が成長できるように支援する |
7. Motivating Individuals “動機付けする” | □ 内在する欲求に応える □ 任務を実現可能な仕事に落とし込む □ 現実的かつチャレンジングな目標を設定する □ 適切で効果的なツールを提供する □ 定期的にフィードバックをおこなう □ 成功を称賛する □ 定期的にチームビルディングをおこなう □ メンバーが何によって動機付けされるのかを把握する □ 意欲的な人を選び、任せる □ メンバーを正当に評価する |
8. Set an Example “模範となる” | □ リーダー自身が良き模範となる □ 有言実行、言行一致 □ 前に立ち、リードする □ 高い基準で仕事を行い、任務に貢献する □ 最前線で最新の状況を知るために現場に行く □ 現場主義を自分の職場で実現する □ 予めチームの行動規範を定めておく □ 元気づけ、ほめる □ リーダー自身が不平不満を言わない □ 常に積極的である □ フィジカルカレッジとモラルカレッジが存在する |
リーダーシップは誰が発揮するのか?
リーダーシップを発揮するのは誰であろうか?
この問いに対し、間違いなく含められる人物はリーダーである。
資質によるリーダーシップ、権威によるリーダーシップについては「誰がリーダーか?」という問いが重要である。
ただしファンクションによるリーダーシップの発揮については答えを付け加えることができる。
「どのような行動がリーダーシップか?」という問いに対しての答えは、主語が必ずしもリーダーである必要はない。
それは機能からのアプローチによるリーダーシップでは、メンバーもリーダーシップを発揮することが可能となるということである。
メンバーもリーダー同様のファンクションを補完することで、リーダーシップを発揮することが可能となるのだ。
これは、メンバーのリーダーシップファンクション=フォロワーシップの発揮と言い換えることができる。
8 Core Functionsをいかなる状況でも漏れなく発揮できるすぐれたリーダーは存在しうるだろうか。そのような完璧な人物はおそらく存在しない。
メンバーからも、リーダーのリーダーシップを補完することで、成果を最大化させることの近道である。
階層レベルによって変化するリーダーシップ行動
8 Core Functionsだけが、リーダーシップの具体的行動であろうか?
例えばVisionを描き方向性を打ち出すというのはリーダーシップではないのか?という疑問を持つ方もいらしゃるかもしれない。
もちろんそれもはっきりとしたリーダーシップファンクションであり、さらに上位の概念のリーダーシップファンクションも存在する。
三段階のリーダーシップレベル
8 Core Functionsはリーダーの基本的な機能であるが、リーダーの組織における役割によって、発揮するリーダーシップは変化する。
例えば経営層は、より戦略的思考が必要となるであろうし、いくつかの部門を束ねるグループリーダーは、より組織運営に特化したリーダーシップが必要であるという違いである。
これらには3つのレベルとファンクションが存在する。
戦略レベル Strategy | 組織単位 事業全般または組織全体を率いるレベル |
オペレーショナルレベル Opelationl | 部門単位 複数のチームで構成された部門の運営レベル |
チームレベル Functional | 課単位 5~20人のメンバーから成る、基本的なリーダーシップ機能 |
三段階のリーダーシップレベル
リーダーシップがどのレベルで行使されようと、アデアのモデルは変わらない。
3つの対象(Task、Team、Individual)に対し、機能を行使する必要がある。
各レベルのファンクション
3つのレベルのうち、チームレベルのリーダーが行使する機能は前述した8 Core Functionsである。
この8 Core Functionsは、リーダーシップの基礎である。
そして運営レベル(Operational Level)と戦略レベル(Strategy Level)でのCore Functionsは以下の通りである。
Strategy | 1. Provide Direction “方向性(Mission、Vision、Values)を準備する” 2. Strategic thinking & planning “戦略思考と戦略プラン” 3. Making it happen “実現させる” 4. Relating theparts to the whole “部分と全体を関連付ける” 5. Building key partnerships “パートナーシップを構築する” 6. Release the corporate Spirit “企業の精神を解き放つ” 7. Choose Leaders “リーダーを選ぶ” |
Operational | 1. Interpreting “翻訳する” 2. Informing “伝える” 3. Initiating “着手する” 4. Implementing “実行する” 5. Networking “情報網化する” 6. Influencing “感化する” 7. Succession Planning “後継者を育成する |
どのようにしてリーダーシップを身につけることができるのか?
リーダーシップの身に着け方は、皆様の最大の関心事であろう。
これまで「リーダーシップは資質であり、先天的なものである」という古来からの常識を覆したジョン・アデア氏によると、「リーダーシップは、実戦と経験のみによって、誰しもが身にけることができるものであり、そのプロセスは生涯続く。」と断言する。
またジョン・アデアは、「リーダーシップに溺れるな。」とも付け加える。
間違えてはならないのは、「リーダーシップは何であるか?」という問いを解き明かしたところで、リーダーシップを発揮できるようには決してならないということである。リーダーシップのタイプ別分類にしても、自己のリーダーシップスタイルを理解したところで、千差万別なリーダーやチームは、いくつかのタイプで分けられるほど単純なものではないし、リーダーシップ発揮への解決策とはならない。多くの場合、具体的に何をするかには言及されていないのである。
リーダーシップの本質は働きかけであり、行為行動に根差す技術である。
例えるのであれば、練習をしないで自転車に乗ることができるようになることは決してない。
自分自身が責任を果たすべきチームを改めて見渡したときに、自分自身が今現在どのようなファンクションを果たすことが必要であろうか。今一度8コア・ファンクションを見返してほしい。
そのファンクションを特定し、実践し続け、自己の働きかけを内省するという経験を積むことがリーダーシップを身に着けることができる唯一の近道である。
参考資料
・ 英国 超一級リーダーシップの教科書
『原書:Develop your Leadership skills』
▷英国 超一級リーダーシップの教科書
参考HP
・ Adair International Action Centred Leadership
・ Royal Military Academy Sandhurst
・ The root of Leadership
資料ダウンロード
8つの機能でとらえるリーダーシップ醸成.pdf
『企業と人材2015年8月号』にて弊社酒井が解説した記事です。
8つの機能でとらえるリーダーシップ醸成
~仕事・チーム・個人に対する日々の実践を、研修の場でどう学ぶか