戦略の基本は、組織の基軸を定めること
– Mission / Vision / Values / Goals / Objectives –
組織の基軸とは?
弊社では、Mission、Vision、Valuesに、Goals、Objectives(ゴールを達成させるための1年未満の短期目標)を加えて組織の基軸と呼んでいます。
組織の基軸は戦略であり、基軸を定めることは、戦略立案の基本です。
そして個々のメンバーがリーダーシップを発揮する源泉となるものです。
これらが戦略であるという根拠は、事業目的さえあればMVVが無くても会社や事業は成り立つということがあげられます。
より本質的で欠かせないものと言えるのであれば、MVV無き事業は成り立たないはずです。事業目的はどのような企業にも存在しますが、理念が明文化されていない企業も多く存在します。
MVVを定めるということは、メンバーの組織に対するコミットメントを引き出し、一貫した組織活動を成り立たせる指標となるのです。
その他の表現
組織の基軸は次の言葉でも表現されます。
- MVV
- Way
- 経営理念
- フィロソフィ
- アイデンティティ
- クレド
- ビリーフス
- DNA
効果と意義
組織の基軸とは、組織の思想を明文化し、社会やメンバーに共有化することで、組織のパフォーマンスを高める戦略のひとつです。
共有化することは、次のような意義や効果があります。
- 方向性の明確化
- 社会的信用・信頼・ブランド力の向上
- 戦略的企業文化の構築
- メンバーの主体性を引き出す
- 決心、覚悟、使命感の醸成
- カリスマ性の象徴、代役
- 判断基準となり迅速かつ適切な意思決定が可能
- 拠り所となり、環境や心理要因でぶれない
組織の基軸の定義は、組織の思想が色濃く反映されるため、多様な解釈が存在します。 Mission・Vision・Valuesの序列も入れかわります。
解説内容について
弊社は1994年の創業から変わらず、特に Values の重要性について、多くの 企業様と共に考えてまいりました。 ここでは弊社が研修の場で得た実践知の共有をはじめ、実際のリーダーシップ研修、組織のMVV構築、戦略ミーティング、風土変革ミーティングの際に使用する理論をご紹介します。
MVVはこうであるといった明確なものは組織の思想に大きく影響を受け、解釈はそれぞれです。ここで解説するものは数多くのケースから得られた実践知で、より意義があり、効果的なMVVとはどのようなものであるかという実践知であるということをご理解ください。
なお我々のプログラムでは「基軸は何か?どういう意味・内容か?」という観点よりも、 「なぜチームで基軸を共有することが大切なのか?」ということを体感からから学習するプログラム を実施しております。
言わば体感型理念研修 を提供してきましたが、このM-VVGO理論は、理念のロールモデルともされる代表的な企業様(一例参照)との人財育成の場にも受け入れられているものです。
(プログラム実施企業 一例)
・エーザイ株式会社
◯hhc
・パナソニック株式会社
◯綱領
◯信条
私たちの遵奉すべき精神
・KDDI株式会社
◯フィロソフィ
・三井物産株式会社
◯MVV
・キッコーマン株式会社
◯経営理念、キッコーマンの約束
・大日本印刷株式会社
◯文明の業を営む、対話と協働
組織の基軸 5つの概念レベル
1)Mission Statement 使命、存在意義 =不変のもの | 組織が存在する目的、真の理由 組織が社会の中で果たす役割 |
2)Vision 長期的展望 あり姿 =10年 | 組織が長期的に目指すもの 言葉を変えれば「Long Term Goal」 |
3)Team Values 組織が大切にする価値観 =不変のもの | 組織として何を最も大切にするか その組織のこだわり、譲れないもの 物事を判断する際の基準 (ものさし) 組織の学びや教訓が含まれる ときに創業者の価値観が明文化される ValuesはVisionと連結され、行動指針、行動規範などの表現でブレイクダウンされる Value(バリュー)と単数形で表示される概念があるが、本来は価値観を意味するValues(バリューズ)と複数形で表記される |
4)Key Strategic Goals 目的、目標 =3~5年 | ビジョンを達成させるための戦略中期ゴール 一般的には中期経営計画などが当てはまることが多い |
5)Objectives 短期的目標 =1年未満 | ゴールを達成させるために何が必要か 各部門の目標などで示されることが多い さらに目標を実行するためのアクションも設定される |
Missionとは?
Mission Statement(使命・存在意義)
社会の中で、組織が果たし続ける大きな役割。
わたしたちは何のために存在しているのか
Missionという言葉の意味
使命/役割/任務の意味。義務を果たすという意味が込められる。
(オックスフォード現代英英辞典)
組織のMissionとは
組織はミッションステートメントという形で、組織の目的を明文化して社会に対して発信している。社会の中での組織の「存在意義」と言うこと。すなわちMissionとは組織はどのような使命、社会のなかでの役割に対して責任を果たし任務を遂行し続けることができるのかを宣言したものである。
重要なことは、ミッションを共有することで、 リーダー自身とメンバーが、組織に対してコミットメントと仕事に対しての使命感が生まれるかどうかということ。よってリーダー自身は、メンバー以上に自組織のMissionを考え抜く必要がある。
パナソニック社の松下幸之助翁の言葉を借りれば 「この会社は何のために存在しているのか」という意味である。幸之助翁も、事業を始めた当初から明確な経営理念をもっていたわけではないと、『実践経営哲学PHP』の中で記している。ご自身の経験と実践の中から磨き上げられたものである。いまでも「綱領」として全社員共有されていますので参考までに記す。
「産業人たるの本分に徹し、社会生活の改善と向上を図り世界文化の進展に寄与せんことを期す」
【企業は社会の公器】 【共存共栄】
Visionとは?
組織、チームが持つ未来への展望・目的地。私たちはどこに行こうとしているのか?
心に描く像/未来像/「長期の」展望/見通し (広辞苑)
組織が目指す長期的な展望 (経営学ゼミナール 日本経済新聞社)
組織のビジョンとは
5~10年の長期的な未来像を持つことは、チームの進行を容易にしてくれる。すなわち組織の道しるべとなるものです。変化が激しい現在のビジネス環境であるからこそ、Visionを持つことで目指す方向へ舵を切り、進むことができます。チームでVisionを共有することで、個々のチームメンバーのベクトルを集結することが可能となります。
さらにVisionはメンバーがワクワクできるものであればより強いものとなります。映像的、動画的となっていればさらに望ましく、絵を書いてみるのも良い方法かもしれません。
チームの価値観に連結され、さらに威力を発揮するものです。
あるべき姿(長期的展望)は時に変化のうねりにさらされる。
激動期においては、新たなVisionを再構築することもある。この点はValuesと決定的に異なる。
ただし指し示す目的地が、自分本位でありすぎることは、社会から賛同を得ることができない場合があります。たとえば売上○○億円、業界一位など、利益追求のみのVisionは、Goalsである。その際はfor whom(誰のために)を考えると良い。企業がどのような姿となり社会や顧客に貢献するのか。誰に貢献するために、どのような成果、サービス、プロダクトを目指すのか。ということです。
Valuesとは?
Team Values(基本となる価値観)
チームとして最も大切にするもの = チームの拠りどころ
Values(価値観)という言葉の意味
個人もしくは集団が世界の中の事象に対して下す価値判断の総体(広辞苑)
物事を評価(判断)する際に基準とする、何にどういう価値を認めるか(大辞泉)
組織のValuesとは
組織がもつ、本質的で深い信念。外部環境がどうあろうと組織が最大の配慮を注ぐもの。(日経MBAの経営)
組織活動の正当化基準である。 組織のメンバーは、何に価値をおいて行動を起こすべきであり、どのような行動が組織活動として評価されるか。 個人の価値観が個人の生き方を定めるように、組織の価値観は、組織のあらゆる活動の方向性を定める。 言い方を変えると、組織とは「ある特定の価値観」を共有する集団とも言える。
個人はそれぞれに自由な価値観を持つことができる。
しかし、その組織に所属する以上、最低限所属する組織の価値観を共有すべきである。
相反するものでなければ組織は複数の価値観を保持できる。
企業らしさを明文化するため、独自の尖った言葉で表現される。 創業者の価値観、企業の本質的な成功要因、組織の教訓が明文化される。
組織・チームでValues(価値観)を共有すると?
同じ言語で話し合える。
参画意欲、情熱、意欲が高まり、仕事に興味を持てるようになる。自分のしていることに関心が持てれば、必然的に仕事の効率は上がり、満足度は上昇し、ストレスや緊張は減る。
仕事に没頭できるようになるため、創造性も増す。
共通の価値観は、内なる羅針盤となって、メンバーが主体性を保ちながら、仲間と助け合うことを可能にする。
メンバーの価値観と組織の価値観が一致していると、メンバーは組織に忠誠心を抱くようになる。
自分はチームの一員だと感じれば、コミュニケーションは正確で質の高いものとなり、意志決定のプロセスも透明になる。
自分と会社の価値観が一致していると感じている人は、そうでない人より仕事や会社に愛着を感じやすく経営に対する信頼度も高い。
本田宗一郎氏の言葉
「理念なき行動は凶器であり、行動なき理念は無価値である」
Valuesを組織で共有する意義
間違えてはならないのは、一体感を強いるものではない。
一体感は強いられるものではなく、時間を掛けて、共に練り上げて行くものなのだ。
重要なのはそれぞれの価値が意味するものと、その重要性を全員が理解していること。
組織の価値観をトップダウンでメンバーに押しつけることはできない。
共通の価値観はメンバーと共に創り出すものであり、その過程に参加したメンバーは、その価値観に当事者意識を持つようになる。
価値観は、メンバーが心から支持し、受け入れられるものでなければならない
メンバーが共有しないなら、それは単なるキャッチコピーやスローガンでしかない。
定めた価値観の意味や実践方法を全員がイメージできるようにすることが重要であり、それこそがまさにリーダーの仕事である。
注意すべき点は、異論を押さえる口実として、組織の価値観を利用してはならないということだ。
反対意見が封じられ、組織の価値観が絶対的な協議となるとき、表現の自由は奪われ、それとともに革新性、創造性、能力、ときには人命も失われる。
メンバーが喜んで参加し、貢献したいと思う文化をつくりたいなら、表現の自由を必ず確保することも重要である。
Goalsとは?
Key Strategic Goals (目標とその目的)
Visionへ到達するための目標とその目的
Visionに到達するための目的、目標のこと
Goalsを定めるときの着眼点
Visionに対して以下のことがヒントとなるでしょう。
- Visionに対してのギャップ
- 必要不可欠な成果物
- 成長分野の特定と数値的指標
- 事業ポートフォリオの再構築
- Vision到達を阻害する本質的な課題と解決策
- 外部環境や社会情勢の変化と対応策
Goalsを設定する上での注意点
- 核心を突くものであるか
- 網羅しており、特定の項目に偏っていないか
- 具体的かつ定量的か
- 達成できたかわかるか
Goalsを目指す上での注意点
ゴールを目指す上で、注意すべきは手段の目的化である。たとえば 利益を上げるためにMissionやValuesをないがしろにしてはならない。Goalsは、 Visionをはじめ、MissionやValuesよりも具体的で目指しやすく、わかりやすいもののため、Goalsが優先されることが起こりうる。これらの現象は、 ときとして不祥事の原因となりうる。
MVVを構築する上でのポイント
・会社にMVVがないから、チームにMVVを定めることができない?
◯MVVは、会社大だけではなく、組織やチーム単位でも携帯することができます。
◯ただし会社にMVVが明文化されていない場合、過去の歴史などを振り返り、思慮深く検討する必要があります。それほど効果があるものです。
◯会社にMVVがある場合は、チーム単位で制定するときの大きな手掛かりとなるでしょう。
・まずは何から始めるか?
◯MissionまたはValuesから定めることを推奨します。
◯Visionは変化するものであり、Mission、Valuesは育つものであれど本質的には不変です。
◯変化するものを手掛かりにはじめるよりも、企業として最も大切なこと、すなわち基本となる価値観(Values)を定めるべきです。
◯何を大切にするかによって、目指す方向は変わってきます。
◯ピボットするにしても機軸は必要です。
◯ただしドリーマーにとっては、Visionの方が描きやすいでしょう。
◯「なぜそのVisionを目指すのか?」という問いは、MissionとValuesを見つけるヒントとなるでしょう。
・各概念の定義を確認しましょう
◯各人が思うことを出し合ったあと、それがどの概念になるのか整理することも、否定とはならないので良い方法です。
◯言葉は大切にしましょう。自分たちならではの表現で、シンプルに、使えるものを。
◯メンバー全員が参画すること。新入社員から社長まで、全員が参画することに意義があります。
◯最終的に多数決で決定すると、納得のいかないメンバーは使えるものではないでしょう。
◯議論を尽くすことがとても大切です。
・MVVを構築したあとは
◯何よりも大切なのは、意識して実行することです。
◯都度メンバー全員が基軸を共有した行動がとれているかどうか振り返りましょう。
◯繰り返しとなりますが、異論を押さえつける口実ではありません。
◯個人の価値観を否定することは、その瞬間に多様性と主体性が失われます。
◯MVVは育てることができるものです。
◯頻繁に変えてしまっては意味がありませんが、使えないものであるならば見直すことも必要でしょう。
・フラットな組織にMVVは不要?
◯注目を浴びるティール、ホラクラシー組織は、言わば組織の存在目的を重視する組織。
◯Visionや事業領域は変化するが、組織の存在目的であるMissionの共有は行っていると言える
◯またティール組織が成り立つということは一定の価値観、例えば自己実現の追求、徹底した個の受容、セルフマネジメント、自由な意思決定、イノベーターであること、ルールよりポリシー、コンプライアンスなどのValuesが共有されていると捉えることもできる。
◯組織を成長させるためには、共有する価値観を見直したり、アップデートしたりすることがスタートである
理念浸透・チームビルディングプログラム
弊社では、M-VVGOの構築をはじめ、なぜ組織に理念が必要なのか、その意味・意義を体感から学習するプログラムを行っております。ここで解説した理論を実際に使用することで、より深い意味を浸透させるものです。M-VVGOを確立し、メンバーのコミットメントを引き出したい方、組織の成長を目指す方は、お気軽にお問い合わせください。